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Column

親の就職活動

2009.12.3

「西尾さん、僕は御社に入りたいのですが、御社に決めると親が泣きます・・・」。前々職のとき内定を出した、日本最高学府の学生の断り文句だ。

なんじゃそりゃ、でもあるが気持ちがわからないでもない。

なんたって日本の最高学府卒業見込みである。親は小さいころから手塩にかけて教育をしてその集大成が、「いい会社に就職させる」ことであるのも頷ける。
なのに、上場しているとはいえ、ベンチャー企業とカテゴリーされ、社員が数百人規模ぐらいの会社に就職すると聞いたら、親も困るかもしれない。

そのときは、親を説得できない学生なら、採用してもダメだろうなあ、と思ったので深追いしなかったけど、彼がそういうのもわかる気もしていた。

僕の父親は、家庭の事情で学歴を持てず(勉強はできたという話だったが、ほんとのところどうだったかはもはやわからない)、丁稚奉公で東京の材木屋に勤めた人だ。学歴がないということで苦労もしたのだろう。中小企業でたたき上げた人だった。

だから、僕の就職については、「大きな会社で安定的な仕事をしてほしい」という願いが強かった。母親もそうだ。「安定していてボーナスがたっぷりもらえる会社に行きなさい。」とよく言っていたものだ。

中小企業での勤めで、苦労したのだろう。あるいは、父親は僕が中学生のときに独立してこれまた苦労したもんだからなおさらなのだろう。

だから、僕の最初の就職先である、自動車会社に入ったときはそれなりに喜んだようだ。
(母は、「なんでソニーとかミツビシなんとか、とかじゃないのかね」とぼやいていたが、社員が1万人を超える会社に勤めたのだから、願いがかなったというものだろう。

ところがその子は2年で転職してしまった。それを告げたあと、父親は半年ほど口をきいてくれなかった。転職先が、日本を揺るがす事件を起こした会社だからなおさらだ。「そんなところに行かせる為におまえの学費を払ったわけではない」と言われて、おかんむりだった。

父親の想いはわかる。でも時代が少しずつ変わっていたと思う。そのときばかりは、父親の納得よりも、僕は自分の想いを貫いた。

結果的にはよかったと思っている。父親もその後の僕の数々の転身については何も言わなくなったが、僕の独立前に亡くなったので、今の僕をどう思うのかはわからない。

でも、とにかく言いたいのは、父親の世代の世の中の価値観と今は大きく違っているということ。親の価値観で就職を決めると、おそらく失敗する。時代が違うんだ。

寄らば大樹の陰、というのはおそらくこれから通じないだろう。大人気航空会社もあの体たらくだ。

親のための会社説明会を行う会社のことが昨年ぐらい話題に上ったが、若い人に言いたいのは、親を納得させる強さをもたなければならないということ。

そして僕も含めて人の親である人たちは、助言はすれども、自分の価値観を子どもに押し付けないことが大切だと思う。

採用活動しているとき、一番の問題は親の価値観だと思った。就職活動をしている学生さんもたいへんだけど、親が変わらなければ、彼らの苦労は増えると思う。

母親はいまでも、「自動的にボーナスがもらえる会社を辞めるなんて・・・」と言う事があるけどさ。「母ちゃん、ボーナスは自動的にもらえるわけじゃないんだよ、みんなどこにいたって苦労しているのさ」

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