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超ジョブ型とは何か?④「どこでも働ける人材」をつくることが雇用を守る

2021.08.26

コロナ禍で黒字リストラが増える中、従業員シェアやワークシェアリングなどの雇用を守る取り組みが注目されています。どちらも有効な施策ですが、長期的に継続するかどうかが鍵となります。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、雇用を守るために人事担当者がすべきことについてお伝えします。

コロナ禍における
「従業員シェア」が示す雇用の新しい可能性

前回は副業を始めとする多様化するワークリソースの活用についてお伝えしましたが、コロナ禍で黒字リストラや企業の倒産が増える中、雇用を守る取り組みが注目されています

例えば、JALグループやANAグループはKDDIや家電量販店のノジマに数百人規模を出向させました。イオングループ、パソナグループなども出向の受け入れを行なっています。業績不振企業が人手不足企業に従業員を出向させる「従業員シェア」は、とても良い施策だといえるでしょう。

出向というのは、出向元との雇用契約は維持したまま、他社と出向契約を結び、他社の指揮命令下で業務を行う施策です。副業は、副業先において会社の人事権は行使できませんが、出向は、「出向から戻す」「延長する」などの人事権を持ち続けることができます。

従業員シェアは、出向元と出向先で給与の差が出た場合は、出向元がその差額を負担するケースが多く、従業員の雇用と収入が維持できます。出向先での経験は、出向元に戻っても活かせます。また、会社が望む業種や職種を経験させることもできるでしょう。

自社では得られない経験を、会社主導のもとで、他社で経験してもらえる。様々な規模や業種の企業と人的交流を図れる。これは人材育成の方法としても有効なひとつです。

今は自社で人材を囲っている時代ではありません。副業と同じく、出向の受け入れも積極的に行えば、他社の優秀な人材を活かし、戦略的に自社のイノベーションを促すことができます。多企業間で人材をシェアし、個々の活躍の場を広げていくのは望ましいことです。従業員シェアは、現在のような緊急時や景気の後退期時以外にも活用できるはずです。

人事の究極のミッションは
「どこでも通用する人材」をつくる

雇用を守る取り組みとして「ワークシェアリング」も注目されています。ワークシェアリングとは、解雇することなく仕事を従業員で分け合う施策です。1人の仕事を複数人で分担することによって、失業させずに雇用を維持できます。長時間労働といったハードワークの軽減にも有効で、生産性を向上できるともいわれています。ただし、ネックとなるのは社員の収入が下がることです。

雇用を守ることは、経営者の務めといわれています。従業員シェアもワークシェアリングも一時的な雇用の維持に対してはとても有効な施策ですが、長期的に見ればどうでしょうか?

私は「雇用を守る」というのは、「自社で」ではなく、社員を「どこでも働ける人材にする」ことだと考えています。「この会社を辞めたらどこにも行けない」、これは最も不幸なことです。逆に「いつ辞めても大丈夫」と思えたら、どれほどの安心感をもたらすでしょう。こういう状態をつくりだすことが、本当の意味で「雇用を守る」ことにつながると思うのです。

人事の究極のミッションは、「どこでも通用する人材をつくること」「どこでも働ける人材がウチにいる」という状態をつくり出すこと。私はそう考えています。そして、そういう人材を「超ジョブ型プロフェッショナル」と呼んでいます。

今後はますます早期退職という名目のリストラが増えていくはずです。「この会社で定年まで勤め上げよう」と思っていても、45歳になったら「早期退職しますか?」と言われてしまうわけです。これからの時代は、転職が増えていくでしょう。働き方の「多様化」だけでなく、人材の「流動性」も高まっていきます。

私は30年前、新卒で入社した自動車メーカーを3年で辞めて転職しました。しかし当時は、新卒が3年で辞めるなんて前代未聞でした。会社の恥になるとされていたので、私は表向きには「転職します」とは言えず「家業を継ぎます」と言って辞めました。それが現在では、新卒が3年で3割辞めるのは常識となって久しいです。

なぜ新卒は3年で辞めてしまうのでしょうか。「この会社にいても成長できない」「外で通用する力が身につかないので不安」という声をよく聞きます。若い世代にとって、転職は当たり前になっています。今の時代は、社内でしか通用しない力を身につけても、将来の不安は消えないのです。自身の成長に意欲的な若い世代ほど、会社に見切りをつけて、早く辞めてしまうのでしょう。

黒字リストラの対象となる中高年にとっても、外でも通用する力を身につけることは死活問題です。この会社を辞めたらどこにも行けない。そんな人をリストラしたら、不幸しか生み出しません。

だからこそ人事は、「どこでも通用する人材」の育成を目指すべきです。この会社にいれば成長できる、外に出ても通用する人材になれる。そう思えば、逆に社員は辞めません。「ここにいると成長できて仕事が面白い」、そんな環境をつくっていくことこそが、会社や人事に求められていることではないでしょうか。

なぜ「超」ジョブ型プロフェッショナルなのか?

どこでも通用する人材をつくることが重要なのは、社員のためだけではありません。優秀な人材を集め、会社の業績を上げていくためにも必要なことです。

働き方が多様化し、人材の流動化が高まる。ここでは成長できないと思った人は、さっさと辞める。そういう状況において、会社にしがみつく人ほど、将来活躍する見込みは低いです。どこでも働ける人は離職し、他には行けない人だけが残る。こんな悪循環に陥ったら、企業は弱体化してしまいます。

良い循環をつくるためには、あらゆる雇用形態・契約形態を視野に入れ、多彩な働き方を認めましょう。優秀な人材は雇用契約にはこだわっていません。有期契約、業務委託、副業など、様々なスタイルで働ける形をつくり、いろんな才能を、いろんな方法で繋ぎ止めておけるようにすべきです。

そして、一度縁のあった人に対しては、どこでも通用していただくような仕組みをつくることが重要です。それはキャリアステップの指標であり、世の中で通用する普遍的な指標であり、それに基づいた評価やフィードバック、給与制度を構築していくことです。その仕組みによって気づきを与え、力をつけていただく。それが超ジョブ型時代の人事です。

なぜ「超」なのかというと、ジョブ型とは職務を明確にする雇用制度です。その明確の仕方の抽象度を上げておかないと、どこでも通用する力にはなりません。ここ(自社)でしか通用しないジョブディスプリクションの中だけで仕事をしてしまうと、他では通用しなくなるリスクがあるのです。

実際、欧米におけるジョブディスプリクションは、かなり抽象度が高いそうです。海外でジョブと呼ばれているものは、多くの日本人がイメージしているような狭義の職務ではないのです。

なぜなら職務は、時代や状況によって変化します。野球に例えれば、「サード」だけを守っていればいいような職務では、変化に対応できません。また、その職務がなくなったときにその人は仕事を失ってしまいます。「内野」くらいのゆるい定義にしておかないと、運用できませんし、他で通用する力も身につかないのです。

与えられたジョブをこなすだけでなく、ミッションと目標をしっかり認識し、自分のジョブを自分で定め、自ら成長していく。これが「どこでも通用する人材」=「超ジョブ型プロフェッショナル」です。

では、どうしたらそういう人材をつくることができるのでしょうか。拙著『超ジョブ型人事革命』(日経BP)に詳しく記していますが、次回、大事なポイントを改めて紹介します。

次回につづく

超ジョブ型

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

会社になくてはならない、
将来を支えてくれる存在が、
「自分は評価されていない」と
感じ会社を去っていく。

このシチュエーションはここ10年で過去にないほどよく見かけるようになりました。

人事ポリシー

「いい人が採れない」
「社員が自ら成長してくれない」
「大切な人が辞めてしまう」
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多くの企業は「重要な人材」に限って辞めてしまうと嘆きます。
それは、当然のことです。「重要な人材」は優秀ですから、あなたの企業のある事に、一番最初に気が付きます。だから、辞めるのです。

評価基準

ー「なぜ、あの人が?」
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